退職金に税金はかかるの?退職所得控除のしくみをわかりやすく解説

お金・家計

「退職金にも税金がかかるの?」

前の記事で、退職金の計算方法についてお話ししました。

計算式を当てはめてみて、「思ったより大きな金額になった」と感じた方もいるかもしれません。でも同時に、こんな不安も出てくるんじゃないでしょうか。

「税金はどのくらい引かれるんだろう」

「せっかくの退職金、かなり持っていかれる?」

結論から言います。

公立・公的な病院で10〜20年働いてきた看護師の多くは、退職金に税金がかかりません。

これは「退職所得控除」という制度のおかげです。今日はそのしくみをできるだけわかりやすく説明します。

※この記事は自己都合退職(自分から辞める場合)が対象です。定年退職は退職金が大きくなるため、計算結果が異なります。
※退職金の計算方法については前の記事で解説しています。


退職所得控除とは

退職所得控除額の棒グラフ(勤続年数別)

退職所得控除は、長く働いた人ほど控除額が大きくなる制度です。

勤続年数 退職所得控除額
10年 400万円
15年 600万円
18年 720万円
20年 800万円
25年 1,150万円
30年 1,500万円

勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)

勤続年数の端数は切り上げです。「18年3ヶ月」は19年として計算します。

退職金がこの控除額以下であれば、税金はゼロです。


税金の計算は3ステップ

退職金の税金計算3ステップのフロー図

退職金が控除額を超えた場合の計算はこの流れです。

ステップ1:退職所得控除額を確認する

ステップ2:退職所得を計算する

退職所得 = (退職金 − 退職所得控除) × 1/2

控除を引いた残りを、さらに半分にするのがポイントです。

退職金が控除額以下 → 退職所得はゼロ → 税金もゼロ

ステップ3:所得税・住民税をかける

退職所得がある場合のみ、税率をかけます。所得税は金額によって変わり、住民税は一律10%です。


看護師の具体例で確認する

勤続年数 退職金(目安) 退職所得控除 税金
15年 約347万円 600万円 ゼロ
18年 約470万円 720万円 ゼロ
20年 約658万円 800万円 ゼロ
25年 約840万円 1,150万円 ゼロ

公立病院で働いてきた看護師の退職金は、退職所得控除の範囲に収まるケースがほとんどです。


税金がかかるのはどんなケース?

月給が高く、かつ勤続年数が非常に長い場合は税金が発生することがあります。

たとえば月給35万円・勤続30年で退職金が約2,000万円の場合:

退職所得控除:1,500万円
退職所得:(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
税金(所得税+住民税):約40万円

退職金2,000万円に対して40万円の税負担です。給与として受け取った場合の何倍もの税金がかかるはずですから、それを考えると退職金は非常に優遇された制度だとわかります。


申告書を職場に出せば、あとは職場がやってくれる

退職所得控除を受けるために、自分でやることがひとつあります。

「退職所得の受給に関する申告書」を職場に提出すること。

これを提出しないと、退職金から一律20.42%が源泉徴収されてしまいます。(あとで確定申告で取り戻せますが、手間がかかります。)

申告書を提出さえすれば、あとの計算は職場がやってくれます。控除の範囲内であれば、源泉徴収ゼロで退職金が振り込まれます。

書式は退職手続きの書類に含まれていることが多いです。もし案内がなければ、人事に確認してみてください。


退職金は、扶養の収入にも含まれない

もうひとつ、知っておくと安心できることがあります。

退職後に夫(または妻)の健康保険の扶養に入ろうと考えている方は、こんな心配をしがちです。

「退職金が数百万円入ったら、130万円のラインを超えてしまう?」

結論から言うと、退職金は扶養認定の収入には含まれません(原則)。

扶養の収入基準に使われるのは「継続的に発生する収入」です。給与・パート収入・年金などが対象で、退職金のような一時的な受け取りは含まれません。退職金がいくら大きな金額でも、扶養に入ることは普通にできます。

税金の優遇(控除の範囲内ならゼロ)に加えて、扶養収入にも含まれない。退職金は、かなり手厚く守られた制度です。

ただし、いくつか注意点があります。

健康保険組合によって独自ルールがある場合も

扶養認定の基準は、全国健康保険協会(協会けんぽ)では上記の原則が適用されます。ただし、会社の健康保険組合によっては独自の判断基準を設けているところもあります。夫の職場が健康保険組合に加入している場合は、念のため確認してみてください。

国民健康保険の保険料は別の話

退職後に国民健康保険に加入する場合、保険料の計算には退職所得が含まれることがあります。これは「扶養の収入に含まれない」とは別の話です。国保の保険料が退職翌年に高くなる可能性があるので、こちらは頭に入れておいてください。

※退職後の健康保険の選び方については別の記事で詳しく解説しています。


退職金というニンジン、自分で大きくできる

年功序列の制度のもとでは、長く勤めるほど退職金が大きくなります。定年まで働き続けることへの「ごほうび」として、退職金がぶら下がっている。

でも私は、こう考えるようになりました。

退職時のニンジンは、資産運用を学び行動すれば自分で大きくできる。

シミュレーションしてみます。

  • 早期退職金:約500万円(長年勤務・自己都合退職の概算)
  • 投資先:S&P500インデックスファンド
  • 想定リターン:年率7%(S&P500の長期実質リターンの歴史的平均)
  • 投資期間:23年(42歳 → 65歳)

500万円 × (1.07)²³ = 約2,370万円

一方、定年65歳まで働き続けた場合の退職金(参考推計):

勤続年数 定年時月給(推計) 退職金(推計)
41年(65歳定年) 約37万円 約2,200万円

※定年退職の支給率・月給は参考値です。職場の規定・昇給によって異なります。

金額
早期退職金を23年間運用した場合 約2,370万円
定年65歳まで働いた場合の退職金 約2,200万円

運用した方が、約170万円上回る。

定年まで我慢して受け取るニンジンより、早めに受け取って自分で育てたニンジンの方が大きくなる。

もちろんこれは試算です。実際の運用成績は変動しますし、定年退職金の額も職場の規定によって異なります。それでも「早く辞めると退職金で損する」という思い込みは、この数字で少し揺らぐんじゃないでしょうか。


私自身の場合

私は公的な病院に長年勤めました(育休2回取得)。

退職所得控除:40万円 × 18年 = 720万円

計算上、私の退職金はこの控除額の範囲に収まりそうです。つまり税金はかからないはず。

退職手続きのとき、次々と書類を渡されて、よくわからないまま署名して提出して——という感じでした。銀行口座の振込依頼も出しました。

あのとき何の手続きをしていたのか、当時はよくわかっていなかったのですが、今あらためて見返すと、あれが退職金の税金をゼロにするための申告書だったんだと繋がってきます。

退職金はまだ振り込まれていません。でも、あとは待つだけです。


まとめ

  • 退職金は「退職所得控除」という手厚い控除がある
  • 勤続20年以下は「40万円 × 勤続年数」、20年超は「800万円 + 70万円 × 超過年数」
  • 退職金が控除額以下なら税金はゼロ
  • 公立病院で10〜20年働いた看護師の多くは、控除の範囲内に収まる
  • 申告書を職場に提出すれば、あとの計算は職場がやってくれる

「退職金には税金がたくさんかかる」というイメージを持っていた方も多いと思います。でも実際には、長く勤めてきた看護師にとって、この制度はかなり手厚いものです。

一度、自分の勤続年数で控除額を計算してみてください。思ったよりシンプルに「税金ゼロ」という答えが出るかもしれません。


参考
No.1420 退職金と税(国税庁)
退職所得の受給に関する申告書について(国税庁)


※本記事は2026年4月時点の一般的な情報と私個人の体験です。制度は変わることがあるため、最新の公式情報をご確認ください。投資には元本割れのリスクがあります。最終判断はご自身でお願いいたします。

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