「最近の若い子は、すぐ辞める」
そういう声を、現場でよく耳にしていました。
根性がない。忍耐力がない。私たちの時代はもっと頑張っていた——そんなニュアンスを含んだ言葉として。
でも、本当にそうでしょうか。
データが示していたこと
公益社団法人日本看護協会が2025年に実施した「看護職員実態調査」に、こんなデータがあります。
「今後も看護職員として働き続けたい」と答えた人は、62.9%。
2021年の前回調査では67.6%でした。4年間で、約5ポイント下がっています。
そして、年齢別に見ると、20〜30代で特に低いという結果が出ています。
出典:公益社団法人日本看護協会「協会ニュース2026年4月号(2025年看護職員実態調査)」(最終閲覧日:2026年4月25日)
https://www.nurse.or.jp/home/about/kyokainews/2026_04.html
「働き続けたい」が満たされていない理由
同じ調査で、「看護職として働き続けるために重要なこと」を聞いています。
上位に挙がったのは、こうでした。
- 業務や役割、責任に見合った賃金 53.6%
- 休みがとりやすい 49.6%
- 職場の人間関係が良い 48.5%
- 希望する働き方ができる 38.9%
これを裏返すと、今の現場でそれが満たされていないと感じている人が多いということです。
賃金が見合っていない。休みがとりにくい。人間関係が難しい。希望する働き方ができない。
それでも続けることを、「当たり前」として求めてきたのが、これまでの看護の現場だったのかもしれません。
約半数が、ハラスメントを経験している
もう一つ、見過ごせないデータがあります。
この1年間で、就業先で暴力や暴言、ハラスメントを受けた経験がある看護職員は49.3%。
約半数です。
しかも、過去の調査と「同程度の割合」とされています。改善されていない、ということです。
誰からハラスメントを受けたかについても、データがあります。
注目したいのは、職場内の看護職からの数字です。
- 上司(看護職) 43.0%
- 同僚(看護職) 21.2%
患者さんや医師からだけではありません。同じ看護職である上司から、同僚から。ハラスメントを受けている人が、決して少なくないということです。
これが「当たり前」として続いてきた現場で、それでも働き続けることを選べる人が減っていくのは、当然のことだと思います。
気づいてしまっただけだと思う
「最近の若い子はすぐ辞める」という言葉を聞くたびに、私は少し違和感を感じていました。
弱いのではないと思います。甘いのでもないと思います。
ただ、気づいてしまっただけではないでしょうか。
賃金が見合っていないこと。ハラスメントが横行していること。頑張っても構造が変わらないこと。
情報が手に入りやすくなった時代に育った世代が、より早く、より正確に、現場の実態を認識している。そういうことではないかと思っています。
感覚は、正しかったのだと思います。
若い人を責める前に
「最近の子は根性がない」と言う前に、立ち止まって考えてほしいことがあります。
構造が、変わっていないのではないか。
「私たちの新人のころは、先輩がもっと怖かった。今はずいぶんよくなった」という声も聞きます。
でも、「昔よりマシ」はゴールではないと思います。
今もなお、約半数がハラスメントを経験しています。「よくなった」を基準にしている間は、構造は変わりません。
医療業界は、他の業界と比べても変化が遅いと感じます。特に看護の現場は、長年続いてきた慣習や価値観がそのまま残っていることが多い。
「私たちはこれで耐えてきた」は、それが正しかったという証明にはなりません。耐えてきたことと、それが正解だったことは、別の話です。
看護の現場には、「経験年数」で見えないマウントをとる空気があります。経験が豊富な方がいいのは、当然のことです。でも、勤務経験が長いからといって、有能であるとは限らない。
これは、自分自身への問い直しでもあります。構造を変えられなかった側にいた私も含めて、変わるべきだったのだと思っています。
経験を重ねるほど力がつく人がいます。でも、年数と能力が比例するかどうかは、また別の話です。
後輩をどんな目で見ていますか。同僚をどんな目で見ていますか。
役割が違うだけです。それなのに、役職や経験年数が人間としての「位」であるかのように振る舞う人が、少なくないように思います。それは、間違っていると思います。
もちろん、管理職は責任が重く、大変な役割だと思います。でも、役職が人間としての上下を決めるわけではない。その勘違いが、現場の空気を作り、後輩を追い詰め、構造を固定していく。その連鎖こそが、危険なのだと思います。
役職も、経験年数も、人間の価値とは比例しません。
他人を見下し、陥れることで、マウントをとろうとする人がいます。そのような人には、近づかないことが自分を守ることにつながります。
まとめ
- 「働き続けたい」と答えた看護職員は62.9%で、前回より低下
- 20〜30代で特に低く、求めているのは「給与・休み・人間関係」
- ハラスメント経験は約半数——上司・同僚(看護職)からも、しかも改善されていない
- 辞めたいと感じるのは弱さではなく、現実に気づいた結果
- 「昔よりマシ」はゴールではない。構造が変わっていないことこそ、問い直されるべき
- 役職も経験年数も、人間の価値とは比例しない


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