「看護師 円満退職」で検索してみると——
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「看護師が退職を言いにくい時の上手な伝え方」
「円満退職をするために!」
そんな記事がずらりと並びます。
私も最初は、そっちを目指していました。
「人がいないから」
有給休暇を取りたいと伝えた。
返ってきた言葉は「人がいないから……」
私は答えた。
「そうですよね。ご迷惑をかけてすいません」
でも心の中では——
いつだって人はいない。
半年後でも、1年後でも、絶対同じことを言う。
長年いたから、わかる。
人手不足は、ずっとそこにあった。
私が辞めるから生まれた問題じゃない。
さらに「有給を取ると思っていなかった」とも言われた。
心の中では「そんなわけあるかーい!」と思った。
でも、そこはぐっと飲み込んで、冷静に。
後任者は決まらず、引き継ぎの話も進まない。
段取りを話そうとすると、どこか避けられているような感覚があった。
病院の人手不足って、
私が有給を返上して解決するようなレベルの問題なのか。
社会問題なのに、
看護師一人の退職前の有給消化で、何か変わる?
円満退職って、誰のための「円満」?
途中から、思うようになった。
円満退職って、誰にとっての「円満」なんだろう。
当たり障りのない退職理由を述べて、有給も取らず、最後まできっちり働いてくれれば——
病院にとっては「円満」だったことになるだろう。
でも、それって自分にとっても「円満退職」と言える?
これまで何日も消化せずに捨ててきた有給を思えば、
有給をもらうことがそんなに悪いことなのか。
まるで犯罪者みたいに。
まだ「いい人」でいたいの?
私はずっと、職場で「いい人」でいたかった。
波風を立てない。
誰かに迷惑をかけない。
自分の気持ちはいつも後回し。
やっと、自分の気持ちに気づけたのに。
その気持ちをまたないがしろにするの?
まだ「いい人」でいたいの?
完全に、自分に向けた言葉だった。
あんな風になりたくないと思っていたのに
職場に、こういう人がいた。
「やってられないよね。辞めたいよね」
そう言いながら、絶対に辞めない。
あんな風になりたくないと思っていた。
でも気づいたら、そっち側にいた。
こりゃダメだと思った。
なりたい自分から、遠ざかっていた。
「辞めたい」が言えなくなった
本当に辞めると決めてから、
「辞めたい」という言葉が口から出なくなった。
もう決まっているんだもん。
「辞めたい」は、愚痴の言葉じゃなくなっていた。
そっと消えるように、辞めることにした
円満退職を目指すのをやめた。
目標を変えた。
そっと消えるように、辞めること。
病院のために頑張ることはやめた。
でも、給料をいただいている間は看護はきっちりやる。
今の自分にできることは、全力でやろうと思った。
病院を困らせたいわけじゃない。
ただ、病院のために命を使い続けることに、白けてしまっていた。
自分しか知らないことがないよう、
これまでの業務を全部引き継ぎ書にまとめた。
それが、私にできる最後の仕事だった。
アセスメント力、結構自信あったんだけどなー
あとになって気づいたことがある。
あの頃の自分、燃え尽き症候群だったんじゃないか。
あんなにやりがいに満ちていたのに、
いつの間にか自分の状態にすら気づけていなかった。
心が真っ黒に丸焦げになっていても、
周りからは意外とそう見えないらしい。
アセスメント力、結構自信あったんだけどなー。
ただの「退職」だって、いいじゃないか
円満退職できる人もいると思う。
私だってそれを目指していた。
ただ、「円満退職」だけが正解じゃない。
ただの「退職」だって、いいじゃないか。
誰だって円満に終えることを望んでいる。
でも、うまくいかないこともある。
それは、決して、あなただけのせいじゃない。
私は、「そう言えば、最近あの人見ないわね」くらいだったと思う。
それくらいで、ちょうどいい。


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